農業の基本の一つに畝立て(うねたて)があります。畝とは土を直線上に盛り上げ、そこに種を蒔き、野菜を一直線上に並べた場所のことです。皆さんも畑でよく見ると思います。
想像するに、人類が初めて作物を栽培し始めた当初は、ただの地面にやみくもに種を蒔いていたのではないでしょうか。しかしそれでは水やりするにもムラができてしまうでしょう。畝を立てて作物を一列に並べることで「端から順にムラなく」作物の世話ができるようになったのではないでしょうか。
この「端から順に」というのはフォイヤーシュタインが提唱した認知機能のうちの一つなのです。また、地面に畝という長方形を作るには、東西南北という方角を考えながら、平行や直角という概念をなんの目印もない地面に投影しないといけません。これもまた別の認知機能なのですね。
収穫の際には、比較や分類という認知機能を使います。目の前のトマトが熟しているのかどうかを判断するためには、大きさや色などの比較基準をつかって比較をしないといけません。
作付計画を考えるときには時間的関係を考えつつ、計画を立てるという認知機能をフルに使います。当然、植物の構造や生殖の仕組みを理解する必要もあります。
このように、農業は農器具や農作物といった具体的なモノを扱いながらも、同時に認知機能や抽象的な概念を駆使する知的な営みです。「農業を通じて知的障害のある方の認知の力を伸ばせないか。」ユメソダテ理事長の前川さんがアイデアをだし、仲間と議論してようやく形になりました。